まちづくり分科会
我々の分科会は京町家の今後についての議論を行いたいと考えている。現在京都市において、住民の高齢化などの問題から、伝統的な家屋形態である町家が急激に減っている。その保全のために行政や一般企業が結託して活動を行っているが、減少を止めることはできていない。生活様式と密接に結びついた文化的遺産でもある町家は、ただ家を形として残すだけでは不十分ではないかという議論もある。また町家のゲストハウスとして再利用が進んでいる東山区では、観光客の迷惑行為に周辺住民から苦情の声が上がっている。町家の保全は、その手法や残す意義があるのかといった根源的な観点においても様々な議論が求められる。
町家に関する問題を考えると、京都市が今後向かうべき方向性についての議論にも、問題意識が広がる。京都市は財政難が続いており、今後税収の増加や観光客の増加が必須である。そのためにはマンションの建設によるファミリー世帯の呼び込みや、観光客の増加による収益の増加が求められるが、マンション建設については京都市の景観保護を訴える人々及び景観条例が制約となり、観光客の増加はオーバーツーリズムによる住民の被害にも繋がる。
他の街と比べると京都市は市内に文化的遺構が様々あり、またその文化的遺構が町家のような生活に根差したものであることが多いため、文化保護を訴える人、一般市民、観光客、そして行政という多様な当事者の視点がぶつかる点も多い。こうしたジレンマについて考えることで、「まちは誰のものなのか」、「まちづくりとは何なのか」といった抽象的な問題についても視座を深めることが期待される。
以上から、参加者には町家の保全についての議論、および京都市の観光、住宅政策についての議論を行い、加えて京都市の今後についてなど様々な観点から、町家の存在についての考えを深めてもらたいというのが分科会の趣旨である。
労働・教育分科会
労働・教育分科会では、日本の労働生産性の向上をテーマに、政府のリスキリングの推進策について考察します。リスキリングとは、仕事に必要なスキルや能力を学び直すことを意味し、2022年には岸田政権の目玉施作として、その推進のために5年で1兆円の財源を充てることが明言されました。背景には、他国と比べた日本の実質賃金は過去30年間でほとんど伸びておらず、その原因が日本の労働市場の硬直性や、過小な人材投資、それによる生産性の低下に求められていることにあります。そのため、政府はリスキリングを推進することで労働者自身のデジタル分野等におけるスキルアップを支援し、さらに成長分野への労働移動を促すことで、賃金上昇を伴う労働市場の流動化の実現を企図しています。しかしながら、企業・個人・教育機関が持つそれぞれのニーズや障壁が「三すくみ」の状態となって、リスキリングによる能力向上は想定されているほど進んでいないのが現状です。
以上から、この分科会を通じて、そもそも日本の労働市場の何が問題か、そしてなぜリスキリングが普及しないのか、その背景にある課題を明確化し、効果的な政策を提言することを目指します。具体的に、参加者は労働者、中小企業経営者、政府関係者の役割に分かれ、それぞれの立場からリスキリングを進めるにあたって何が障壁となっているかを分析し、全体でのグループワークを通してそれぞれのアクターの利害を踏まえながら現状のリスキリング施策を改善するための政策立案を行うことを予定しています。
国際分科会
キューバ・ミサイル危機とは、歴史が最も核戦争に近づいた13日間のことである。ドブスによれば、これは秒単位で全世界の破滅を左右した出来事であった。一言でいえば、ケネディとフルシチョフの自制と慎重さ、そして運が、この危機を危機で終わらせたのであった。しかし実際はそう単純ではない。背景には複雑な外交交渉が存在したのである。彼ら両首脳の決断だけでなく、それを取り巻くグローバルな環境、国内の政治状況、そして彼らに提言を行う他の諸アクターらの影響である。つまり、ありとあらゆる要素が第三次世界大戦の引き金となりえたのであり、そこには極めて複雑かつ緊迫した外交交渉が繰り広げられたのであった。
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国際政治にご関心のある参加者の皆さんには、アメリカの各政策決定者になりきってもらい、この緊迫した外交政策の決定過程を体験していただきます。それを通して、戦略を駆使して国家政策を構築すること、並びに歴史上の重要人物になりきるという貴重な経験を得て頂きたいと考えております。
参加者の皆さんそれぞれには、大統領や国務長官といった各役割が充てられます。当然ながら、追求するのは国益に留まりません。皆さんが各々所属する組織の利益 (組織益) やパーソナルな利益 (人格益) 等にまで、ぜひ踏み込んで頂きたい。
皆さんがこれまで培ってきた知識や経験を活かして、第三次世界大戦の危機を体験してみませんか?